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クリスマスマーケットの起源はソーセージのセールスプロモーション?!

ドイツの奥深い歴史を知ると、ドイツの旅がもっと味わい深いものになります。
冬のドイツと言えば、煌めくイルミネーションが美しいクリスマスマーケット!
ドイツ語ではWeihnachtsmarktと言います。
そもそもChristmasとは、「キリストのミサ」を意味する英語で、ドイツ語のWeihnachtenは一般に「聖夜」を意味します。
いずれにしてもイエス・キリストの生誕を祝うお祭りのことですね。
ではクリスマスマーケットとは、キリストの誕生を祝う市場として開かれる宗教行事なのでしょうか?
ドイツのクリスマスマーケットの起源は、14世紀の中世ドイツに遡ると言われています。
どこが最古のマーケットなのかは諸説ありますが、ここでは現在最も有力と考えられる説をご紹介しましょう。

シュトリーツェルマルクト

一般に最古のクリスマスマーケットと言えば、1434年以来開催のドレスデンのシュトリーツェルマルクトですが、同じザクセン州で、ドレスデンから東に約50キロメートルの街バウツェンのヴェンツェルマルクトは、1384年以来の開催と謳われています。
その根拠は、1843年刊行のバウツェン市の年代記の中で、1384年に国王ヴェンツェルが、「何人もミカエルの日(9月29日)からクリスマスまでの毎土曜日、農村から(市に)肉を持ち込んでも良い」という取り決めを認めたと書かれていることです(典拠1)。
でも中世ではなく後代の19世紀の年代記に書かれたものなので、根拠としては弱いんですよね~。
中世の原史料の発見が待たれるところです。

ヴェンツェルマルクト

これに対してドレスデンのシュトリーツェルマルクトは、1434年10月19日にザクセン選帝侯フリードリヒ2世が、「キリストの聖夜を含む毎週の休日に自由市を開催することを認めた」特権に由来するとされています(典拠2)。
中世ドイツにおいてアドヴェント(クリスマス前の4週間)は断食の期間に当たり、断食明けの休日に自由肉市を開いて肉(主にソーセージなどの加工された豚肉)を買う機会を市民に与えたのではないかと、ドレスデンの歴史家Wozelさんは考えています(典拠3)。
中世において高価な肉を販売する肉屋は市の有力者でしたから、そのツンフト(組合)が王侯に働きかけて自由肉市開催の特権を認めさせたというのは、ありそうな話です。
日本のバレンタインデーがお菓子屋さんの陰謀という説がありますが、さしずめクリスマスマーケットはお肉屋さんの陰謀というところでしょうか。

ドイツソーセージ

いずれにしてもクリスマスマーケット開催の秘密の鍵を握るのは、お肉、なんです!
現在でもクリスマスマーケットの醍醐味と言えば、焦げ目の付いた焼きソーセージにマスタードを塗ってかぶりつき、それを温かいグリューワインでキューと流し込むことですよね!
寒い冬に焼いた肉にかぶり付きたい気持ちは中世人も同じ!
そうです、バウツェン・ドレスデン起源説に則れば、クリスマスマーケットとは、もともとソーセージなどのお肉を買って楽しむための市なんです。
堅苦しい宗教行事ではなく、むしろそこから解放されて美味しいお肉やお菓子を買う庶民の楽しみだったんですね。
ですから、クリスマスマーケットを訪れたときは、必ずソーセージを買って遥か昔中世ドイツの肉市に思いを馳せましょう。

ドイツ観光局広報マネージャー 大畑悟

【引用文献】
典拠1:Karl Wilke: Chronik der Stadt Budissin (Bautzen) von Erbauung der Stadt bis zum Jahr 1830. Hiecke, Bautzen 1843, S. 24.
PDFはこちら

典拠2:Bachmann, Manfred, Der Dresdner Strietzelmarkt, Du : die Zeitschrift der Kultur, 40-12, 1980, S. 71.
PDFはこちら

典拠3:Heidrun Wozel, Der Dresdner Striezelmarkt. Geschichte und Tradition des ältesten deutschen Weihnachtsmarktes. Husum Verlag, Husum 2009, S. 7.

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